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組織風土とは?基本知識から構成している要素、改善のメリットまでくわしく解説

どのような企業の部署や事業所にも組織風土があり、組織風土を知ることで、部署や事業所を構成している要素が分かりやすくなります。また、組織風土と従業員エンゲージメントは、切り離せない関係です。

本記事では、組織風土の基礎知識や構成する要素などを解説します。組織風土を心理的安全性の担保に活用し、従業員エンゲージメントの向上につなげる際の注意点も解説するので、ぜひお役立てください。

組織風土の基本知識

組織風土を活用するためには、組織風土を知らなければなりません。ここでは、組織風土の基本知識を解説します。

組織風土とは

組織風土とは、組織に培われたり、蓄積されたりしている精神や価値観、ルール、体質のようなものです。企業における組織とは、部署や事業所、チームなどが該当します。組織風土は、可視化や定量的な数値化が難しいものであり、組織風土を表現することも簡単ではありません。

また、組織風土は、組織のなかで自然に構築される傾向が強いものであり、組織内で代々引き継がれるケースが多い特徴があります。外部の影響を受けることはほとんどないため、組織風土に変化を加えることは難しいでしょう。

組織風土と企業風土

組織風土は、部署や事業所、チームといった組織単位の特有の風土です。一方で企業風土は、企業単位での風土であり、風土に関する意味合いに変わりはありません。ただし、組織風土と企業風土を混同して使うと、従業員や取引先などに混乱を与える可能性があります。

対象となる組織の規模が異なるため、使い方を間違えないように注意しましょう。組織風土の企業版が、企業風土であると理解しておくと分かりやすくなります。

組織風土と社風

社風とは、従業員や取引先、顧客などが感じる企業の雰囲気や特徴です。組織風土を人間に例えると、癖や性格などのようなものであり、社風を人間に例えると、人柄のようなものといえます。組織風土の集合体が企業風土であり、企業風土から感じられる雰囲気などが社風として捉えられます。

組織風土を醸成するために必要な3つの要素

新たな組織風土を醸成させるためには、3つの要素を知らなければなりません。ここでは、その要素について解説します。

「ソフト」の要素

ソフトの要素は、従業員1人ひとりの価値観や行動、人間関係などです。ソフトの要素は、露見していても明文化はされていないのが特徴であり、組織内の習慣や集団心理などが挙げられます。具体例は、次のとおりです。

・組織トップの影響力の大小
・組織の共通認識による理想の従業員像
・組織内だけのローカルルール
・組織のチームワーク
・組織内の信頼関係
・組織独自の責任の所在
・上下関係や勢力関係
・組織内のコミュニケーション
・従業員エンゲージメント
・組織のコミットメント
・従業員のモチベーション
・組織内だけの判断基準
・従業員個人の価値観
・従業員個人の行動様式

これらの要素に、次に解説するハードな要素やメンタルの要素が絡み合って、組織風土が醸成されています。

「ハード」の要素

ハードの要素は、組織において明文化された様式やルールなどに基づいた要素です。目に見えるものであり、この要素を活用して経営陣や幹部社員が関与することで、組織の意思決定が可能になります。組織風土に、大きな変化を生み出すことができるのもハードな要素の特徴であり、具体例は次のとおりです。

・企業理念
・経営方針
・社是や社訓
・企業や部署のビジョン
・企業や部署の行動指針
・中期経営計画や事業計画
・コーポレートガバナンス
・就業規則
・採用基準
・人事評価制度や基準
・人事異動
・人材配置
・明文化された事業内容
・明文化された業務内容
・マニュアル化された業務プロセス
・組織の構造
・明文化されたコンプライアンス
・明文化されたマネジメント方針
・企業が掲げる理想の従業員像
・リスク管理機能

これらの要素は、従業員が企業で働くものとして必要不可欠な要素です。理解したり記憶したりしておかなければなりません。

メンタルの要素

メンタルの要素はソフトの要素に含まれますが、なかでも、従業員の精神状態や心理面に強く影響するものがあげられ、従業員のモチベーションを左右する、大切な要素でもあります。メンタルの要素は、感情が関わってくるため、コントロールが難しいのが特徴です。

メンタルの要素の改革には、多大な時間と労力が必要であることを理解しておきましょう。ハードな要素のように、劇的な変化を起こすことは避けることが賢明です。

メンタルな要素の指標例は、次のとおりです。

・変化を柔軟に受け入れられるか
・従業員が自発的に行動しているか
・ボトムアップのアプローチが見られるか
・チーム内でのコミュニケーションが円滑であり活発であるか
・上司や責任者などの顔色を窺うことなく、従業員自身が自分の意見を率直に言えているか
・従業員同士が助け合いながら業務に取り組んでいるか 
・無言の圧力やしがらみなどがないか

メンタルの要素は水面下に潜んでいて目に見えない部分でもあり、精神面や心理面に大きな影響を与えるものであるため、十分な配慮が必要です。

組織風土を改善する必要性

現状の組織風土を改革し、改善ためには、その必要性の認識が大事です。ここでは、4つの必要性を解説します。

VUCA時代への対応

企業は、VUCA時代への対応に注力しなければなりません。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の略語です。VUCA時代とは、変化が激しく先も見通しにくく、複雑で捉えにくい時代を意味します。

VUCA時代には、個々の多様性を活かしながら変化を繰り返し、挑戦や進化を続ける組織が望まれます。企業内の部署や事業所などの組織風土で、VUCA時代に対応できる風土が醸成されているかを確認しましょう。

対応できないと判断した組織があれば、これまでよりもさらなる組織風土の醸成が必要です。組織の現状と組織風土を分析し、必要な要素を検討しましょう。そのうえで、組織風土の改革や醸成に、取り組まなければVUCA時代に対応できません。

企業と個の関係性の変化への対応

働き方改革や労働人口の減少などにより、長年根付いてきた終身雇用は崩壊したといえるでしょう。それに伴って、企業と従業員個人の関係性にも変化がみられます。企業と従業員の関係性は、これまでは「相互拘束」でしたが、「相互選択」の時代(グループの主張)へと遷移しつつあります。

このように、企業と従業員個人の関係性に変化があれば、企業側は従業員が「働き続けたい」と思えるような組織風土の醸成が必要です。終身雇用が当然であった時代の組織風土であれば、人材の定着率は下降線をたどる可能性が高いでしょう。

働き方改革への対応

働き方改革によって多様な働き方が浸透したことにより、残業時間の制限など企業への法的、社会的な制約も増えました。

企業は、従業員の理解を得ながら、多様な働き方に対して迅速かつ適格な対応が求められています。そのような環境下でも、生産性を向上させなければ、これまでの売り上げや利益を維持・向上させることは難しいでしょう。そのためにも、よりよい組織風土の醸成が必要です。

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)への対応

多くの企業や団体で、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンが取り入れられています。ダイバーシティは多様性を意味し、エクイティは人々の差がなくなる土台を作ることです。これらを受け容れるのがインクルージョンであり、組織風土をよくするために必要な考え方や取り組みといえます。

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンに対応するためにも、よりよい組織風土の醸成は不可欠です。組織風土が醸成できれば、多種多様な人材が企業に貢献するでしょう。

組織風土をよくするメリット

組織風土をよくすることには、いくつかのメリットがあります。ここでは、代表的なメリットを4つ紹介します。

企業と従業員の方向性を合わせられる

組織風土のハードの要素は、企業と従業員が同じ方向性であるべきものです。企業が方向性を打ち出していても、組織風土が同じ方向であるかが重要です。旧態依然の組織風土は、VUCA時代に対応する企業には適していません。組織風土が旧態依然から脱却できていて、ハードの要素が同じ方向性であれば、企業と従業員の方向性を合わせることが可能です。

心理的安全性が担保される

企業の方向性と組織風土が同じ方向性であれば、従業員も方向性を合わせられます。これにより、共通の方向性や同じ価値観で業務が進められるため、従業員の心理的安全性が担保されることになります。心理的安全性は、組織などで自分の意見や考えを安心して発言できる状態です。

心理的安全性が担保されれば、従業員は働きやすくなり、能力を最大限に発揮するなどのパフォーマンスが向上し、モチベーションも高い状態を維持できるでしょう。これらの作用により、企業が求める生産性の向上が期待できます。また、従業員間のコミュニケーションも活発になり、従業員間の信頼関係も深化するでしょう。

従業員エンゲージメントが向上する

これまでよりも、よい組織風土が醸成されると、従業員ひとりひとりにとっての職場環境が改善されます。従業員エンゲージメントが向上し、自社に対する愛着心が高まるでしょう。これは、リファラル採用などの採用活動にもよい影響を与えます。

また、自社を好きな従業員が増えることによって、組織全体のモチベーションも向上し、企業全体への波及も期待できます。

モチベーション向上や生産性向上が期待できる

よりよい組織風土を醸成されることで、従業員のモチベーションが高止まりし、長期的な生産性の向上が期待できます。

前述したように、企業と従業員の方向性を合わせられることは、従業員の心理的安全性の担保にもつながります。この段階になったら、高まった従業員エンゲージメントやモチベーションを維持できる環境整備も重要です。これらが整備できれば、さらに生産性が上がるでしょう。

組織風土をよくするためのポイント

組織風土をよくするためには、ポイントを押さえておくことが重要です。ここでは、3つのポイントを紹介します。

現状の把握と整理

まずは、現在の組織風土の実態を把握することが大事です。組織ごとに、どのような価値観や判断基準で業務が進行しているかを確認しましょう。従業員の行動やコミュニケーションの傾向などを注視すれば、その組織の組織風土が見えてくるでしょう。

把握した組織風土は、できるだけ明文化して組織ごとに整理することで、比較検討や判断がしやすくなります。現状把握と整理ができたら、次は組織風土の理想像を描く段階です。理想像を描くことで、現状と理想像とのギャップを明らかにします。組織が大きいほど、実態把握や組織風土をよくするための時間が必要です。

急激な変化への注意

組織風土をよくするための改革には、時間を要すると認識しておきましょう。従業員には、現状維持バイアス(変化を避けて現状維持を求める心理傾向)があります。組織風土をよくするためと伝えても、急激な変化は現状維持バイアスを刺激し、強い反感や反発を生む可能性があります。

また、誰しもが知らないものを受け入れることには、多かれ少なかれ抵抗を感じるものです。方向性を示しながら、理解が得られるまで十分に説明し、疑問や不安を払拭することが大事です。時間をかけることをいとわずに、従業員が受け入れやすい環境の整備を心がけましょう。

時間をかけて習慣化

組織風土が変化するステップは、認知→理解→共感→行動→習慣であり、これが組織の文化や組織風土となります。よい組織風土の醸成には、認知や理解を進めるために、根気よく粘り強く取り組む姿勢が大事です。

従業員が新しい変化を理解し、行動様式が習慣化するまでには、相応の時間もかかります。一定数の従業員に受け入れられて臨界点を超えれば、定着して組織風土となっていきます。

組織風土をよくした企業の事例

組織風土の改善事例を知れば、自社の施策に役立ちます。ここでは、東レ株式会社の事例を紹介します。

東レ株式会社

東レ株式会社は、革新的な素材を次々に生み出している、日本を代表する総合素材メーカーです。組織風土を改革する目的は、「挑戦」や「イノベーション」が生まれる組織風土へと変革するためであり、インナーコミュニケーション戦略を打ち立てました。

その理由は、2020年から取り組んできた『「東レ理念」共有・発信プロジェクト』の2年間の結果にあります。社内から「東レ理念には共感するが、現状はそれが可能な風土や組織状態ではない」という声が上がってきたのです。その声を聞いて、何から手をつければよいかわからないという問題に直面し、当社、リンクソシュール(旧リンクイベントプロデュース)を問題解決のパートナーとして選びました。

当社は、人や組織の行動変容をもとに、目指すゴールとそのステップを明示した3年にわたるストーリーを描きました。その内容は、人や組織の感情にフォーカスを当てたものであり、東レ株式会社が求めていた部分です。そこから、社員を主役とした『はじめの一歩賞』と『社員フォーラム』を施策としました。第1回目の施策は成功し大きな成果も得られたため、第2回目は施策をさらに進化させて、100周年に向けた取り組みを充実させます。

組織風土を活用する際の理解しておくべき注意点

組織風土をよくするためには、注意点を理解しておかなければなりません。ここでは、5つの注意点を解説します。

組織風土の良し悪しを決めることは難しい

前述したように、組織風土は性格や体質のようなものです。これは良い、これは悪いなどと分かりやすいものもあれば、良し悪しが分かりにくいものもあります。また、自社が目指す事業や組織のあり方に対して、良し悪しの判断が下される場合もあります。組織風土は、1つの物差しで測り切れない難しさがあることを理解することが重要です。

組織風土を洗い出すことは難しい

組織風土は、目には見えない「ソフト」の要素とメンタル要素に加えて、目に見える「ハード」の要素で成形されています。しかし、大半は目に見えないソフトな要素やメンタルな要素です。

そのため、組織風土を洗い出すのは至難の業であり、洗い出すことができたとしても、相当の時間がかかります。まずは組織風土を洗い出すことが難しいことを理解しましょう。また、要素の洗い出しが中途半端では、活用は難しいといえます。

つまり、企業が組織風土を活用する場合は、時間をかけて多くの組織風土を洗い出し、企業の就業規則などに記載されていない、組織独自の暗黙のルールも聞き取る姿勢が大事です。

活用するには時間を要することが多い

組織風土の活用には、要素の洗い出しを含めて時間を要することを理解しておかなければなりません。組織風土は、長い時間をかけながら築き上げてきた性格(人格)であり、一朝一夕で性格を変えて活用することは不可能に近いのです。時間を要する活用に耐えうる組織体制を整えてから、着手するようにしましょう。

悪い組織風土が浸透することのリスク

組織風土を変えるのは、一朝一夕にはいきません。しかし、悪い組織風土を浸透させてしまうと、社内に大きなリスクがあることへの理解は必要です。悪い組織風土であっても、根付けば簡単には取り払えないのです。

また、悪い組織風土をそのまま放置すれば、さらに悪い組織風土が芽生えるかもしれません。悪い組織風土を根本から断ち切るには、組織の変革が必要です。それでも影響が残るようであれば、該当組織を継続させるか否かも検討しましょう。企業全体に広まれば、企業にとって大きなリスクとなります。

企業風土を改革することのリスク

悪い組織風土を取り払って、よい組織風土を浸透する試みも、中身が伴わなければ企業を崩壊させるリスクとなるかもしれません。例えば、企業側がお題目を掲げるだけで、中身が伴わなければ、従業員の理解を得ることは難しいでしょう。

また、残業の蔓延が問題であれば、「残業時間を減らすこと」よりも「残業しなければならない作業量」に着目しなければなりません。中身が伴わない組織風土の改革では、かえって従業員に負荷を与えることになりかねません。企業がリスクに早く気づかなければ、人材流出につながる可能性もあります。

まとめ

組織風土をよくするためには、ソフトの要素やハードの要素、メンタルの要素の理解が必要です。組織風土をよくする理由は、VUCA時代への対応や多様な働き方への対応、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)への対応などが挙げられます。組織風土は、一朝一夕に変わるものではないことへの認識も重要です。

組織風土についてよくある質問

Q1. 組織風土とは何ですか?

A. 組織風土とは、企業や部署ごとに自然に形成された価値観やルール、習慣などのことです。
企業文化とも関連がありますが、組織風土は部署や事業所などの小さな単位の文化を指します。
組織風土は、長年の積み重ねによって形作られ、従業員の行動や意思決定に影響を与えます。

Q2. 組織風土を形成する要素は何ですか?

A. 組織風土は、大きく以下の3つの要素によって構成されます。

  1. ソフト要素(価値観・人間関係)

    • 上司と部下の関係性
    • 組織内のコミュニケーションスタイル
    • チームワークや責任の所在
    • 従業員のモチベーション
  2. ハード要素(ルール・制度)

    • 企業理念・ビジョン
    • 人事評価制度・就業規則
    • 業務プロセス・組織構造
  3. メンタル要素(心理的要因)

    • 従業員の意欲・エンゲージメント
    • 上司への意見が言いやすいか
    • 仕事に対する主体性の有無

Q4. 組織風土を改善するためのポイントはなんですか?

A. 組織風土の改善には、以下の3つのポイントが重要です。

  1. 現状の把握と整理

    • 組織風土を可視化し、現状の課題を明確にする。
    • 従業員の声を聞き、組織の価値観やルールを再確認する。
  2. 段階的な変革

    • 急激な変化は反発を招くため、時間をかけて少しずつ改革する。
    • 現場の意見を取り入れながら、持続可能な変革を目指す。
  3. 行動の習慣化

    • 新しい風土を定着させるために、経営層が率先して行動する。
    • 理念を日々の業務や会議で取り上げるなど、浸透させる仕組みを作る。

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