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社内表彰は「ネーミング」が命。サイボウズに学ぶ、カルチャーを醸成するユニークな賞の名前

「社長賞」「MVP」そして「優秀社員賞」――。

多くの企業の表彰規定には、こうした名前が並んでいます。もちろん、伝統ある賞には重みがあります。
しかし、もしあなたの会社が「変わりたい」と願い、新しいカルチャーを作ろうとしているなら、その「ありきたりな名前」がブレーキになっているかもしれません。

リンクソシュールが提唱する「アワード」の設計において、ネーミングは単なるラベルではなく、組織を動かす「文化的な記号」であると定義しています。

本記事では、言語学者ソシュールの「記号論」を紐解きながら、ネーミングが組織に与える決定的な影響力と、サイボウズ株式会社などの先進事例に見るユニークなネーミングの極意を解説します。

なぜ「社長賞」では響かないのか? ソシュールに学ぶ「意味」の構造

なぜ、たかが「名前」が重要なのでしょうか。

ここで少し視点を変えて、近代言語学の父、フェルディナンド・ド・ソシュールが提唱した「記号論」のレンズを通して、表彰制度を見てみましょう。
ソシュールは、言葉(記号)は2つの側面から成り立つと説きました。

これを「社長賞」という表彰に当てはめてみます。

多くの社員にとって、「社長賞」という名前(シニフィアン)は、すでに上記のような固定化されたイメージ(シニフィエ)とセットになっています。
この状態で、いくら経営陣が「社長賞の基準を変えました! 今年は挑戦した人を評価します!」と叫んでも、社員の頭の中にある「社長賞=堅苦しい実績重視」というシニフィエ(イメージ)は簡単には書き換わりません。

組織のカルチャー(シニフィエ)を変えたいなら、まずは入り口である名前(シニフィアン)を変えなければならない。
これこそが、表彰制度における「ネーミングの記号論」の本質です。

ユニークで新しい名前をつけることは、社員の脳内にこびりついた古いイメージを断ち切り、「あ、この会社は何かが変わったぞ」「こういう行動も評価されるんだ」という新しい価値観を植え付けるための最短ルートなのです。

【事例】サイボウズに学ぶ、価値観を体現するユニークな賞

では、実際に組織文化を変革するような「優れたネーミング」とはどのようなものでしょうか。
グループウェア大手のサイボウズ株式会社の事例は、まさに「ネーミングがカルチャーを作る」ことを体現しています。

「チームオブザイヤー」──スタープレーヤーより「結束」を

同社には「チームオブザイヤー(One Team賞)」という賞があります。
もしこれが「年間最優秀部門賞」だったらどうでしょう。「スタープレーヤーを抱える部署が偉い」というメッセージになってしまいます。
あえて「チーム」と名付けることで、「わが社では単なる成果よりも、チームワークこそが賞賛されるべき価値である」というメッセージを強烈に発信しているのです。

「連携マスター賞」──縦割りの壁を壊す

組織の課題になりがちな「縦割り(サイロ化)」を防ぐために設けられたのが「連携マスター賞」です。
部署や職種の垣根を超えて調整・連携した人を称えるこの賞は、「自分の仕事だけしていればいいわけではない」というメッセージを伝えています。
名前自体が、理想とする行動指針になっている好例です。

「グルメ王」「ひとこと賞」──心理的安全性と多様性

極めつけは、「グルメ王」や「ひとこと賞」です。
「グルメ王」はランチ情報に詳しい社員を、「ひとこと賞」は会議での気の利いた発言を表彰するものですが、一見業務と無関係に見えます。
しかし、このユニークな名前が発している意味は重大です。「仕事以外の個性も認めるよ」「会議で些細なことを言ってもいいんだよ(心理的安全性の促進)」という、同社が大切にする「多様性」の文化を、理屈ではなく「名前」で体感させているのです。

リンクソシュール流・「刺さるネーミング」の設計メソッド

では、自社らしい「刺さるネーミング」はどのように作ればよいのでしょうか。
ただ奇をてらえば良いわけではありません。重要なのは「Why(目的)」からの逆算です。

1. 伝えたい「シニフィエ(概念)」を定義する

まず、「この賞を通じて、どんな風土を作りたいか?」を言語化します。

2. コンセプトを「シニフィアン(名前)」に変換する

定義した概念を、最も端的に、かつエモーショナルに表す言葉を探します。
ここで有効なのが、「創業の精神」や「共通言語」の引用です。

サントリーホールディングスの事例を見てみましょう。同社は「イノベーション賞」ではなく、「有言実行やってみなはれ大賞」と名付けています 。
創業者の口癖であり、社員なら誰もが知っている「やってみなはれ」という言葉を使うことで、「理屈抜きで挑戦しよう」「失敗してもいい」という精神が、瞬時に全社員に伝わります。
もしこれが単なる「新規事業提案賞」だったら、ここまで社員の心に火をつけることはなかったでしょう。

まとめ:ネーミングは「細部に神が宿る」

表彰制度の改革において、賞金の増額や豪華なトロフィーの制作にはコストがかかります。
しかし、「賞の名前を変えること」にかかるコストはゼロです。

「社長賞」を「ファーストペンギン賞」に変えるだけで、あるいは「永年勤続賞」を「レジェンドマイスター賞」に変えるだけで、そこに込められた意味は一変し、社員の行動変容を促すスイッチが入ります。

ネーミングは、経営が従業員に送る「文化的メッセージ」です。

あなたの会社の表彰制度の名前は、ありきたりなラベルになっていませんか? それとも、社員の心を動かす「記号」になっていますか?

まずは、賞の名前を一つ変えるところから、カルチャーの変革を始めてみてはいかがでしょうか。

リンクソシュールでは以下のようなセミナーを開催するとともに、個別での支援事例紹介も行っております。是非お気軽にご相談ください。

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