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賞金よりも「ストーリー」を贈ろう。受賞者をロールモデルに変える、表彰後のナレッジシェア術

華やかな表彰式が終わり、照明が落ちる。受賞者は賞金とトロフィーを手に喜び、参加者は「よかったね」と拍手を送って解散する──。

もし、あなたの会社の表彰制度がここで「完結」しているなら、それは非常にもったいないことです。

多くの企業が、表彰制度を「年に一度のイベント」と捉え、当日を盛り上げることに全力を注ぎます。
しかし、リンクソシュールが提唱する戦略的アワードの本質は、イベントそのものではありません。

表彰制度とは、「1年というサイクル」を通じて、組織全体にメッセージを浸透させるマネジメントシステムです。

式典という「点」は、あくまで通過点に過ぎません。本当に重要なのは、式典以外の長い時間において、「今回は選ばれなかった9割以上の非受賞者」にどのような影響を与え、次の行動を変えさせるかという点にあります。

本記事では、受賞者を単なる「ラッキーな人」で終わらせず、全社員の「ロールモデル」に変え、組織全体の実行力を底上げするための「ナレッジシェア術」について解説します。

なぜ、賞金だけでは組織は変わらないのか?

「表彰=ご褒美(インセンティブ)」という古いパラダイムから脱却できない企業は、どうしても「賞金の額」や「豪華な副賞」で社員を釣ろうとします。
しかし、金銭的・地位的な「外発的動機づけ」の効果は一時的であり、組織のエンゲージメントを永続的に高めることは困難です。

金銭は「消費」され、ストーリーは「資産」になる

ここで重要となるのが、承認欲求や所属意識に働きかける「感情報酬」の仕組みです。
ステージ上でスポットライトを浴び、経営トップから直接称賛される経験は、受賞者に強烈な「誇り」と会社への「帰属意識」をもたらします。

しかし、それだけでは「受賞者個人の喜び」で終わってしまいます。
組織全体を変えるために必要なのは、その感動を「非受賞者へのメッセージ」に変換することです。
金銭は使えばなくなりますが、受賞に至るまでの「苦労」や「工夫」というストーリーは、共有することで組織の「資産」として残り続けます。

「武勇伝」で終わらせない。1年という「サイクル」で組織の資産にする

表彰制度が他の研修やプロジェクトと異なる最大の強みは、「周期的な特性」を持っていることです。
毎年必ず訪れるこのサイクルを利用し、受賞者の成果を「個人の武勇伝」から「組織の成功レシピ」へと昇華させなければなりません。

「暗黙知」を「形式知」に変える

優れた成果を出した社員の頭の中には、独自のノウハウや工夫といった「暗黙知」が眠っています。これを掘り起こさずに放置すれば、その成果は「あの人は天才だからできた」という他人事で片付けられてしまいます。

表彰後のナレッジシェアとは、この暗黙知を「形式知(誰もが真似できるレシピ)」に変換する作業です。

特に注目すべきは、輝かしい「結果」そのものではなく、そこに至るまでの「プロセス」です。
どのような壁にぶつかり、どう乗り越えたのか。その泥臭いストーリーの中にこそ、非受賞者が明日から真似できる「学び」が含まれているからです。

表彰式をゴールにするのではなく、式典が終わった翌日から、この「成功のレシピ」を全社に拡散し、次のサイクルに向けた学習期間とすること。
これこそが、制度を「点」ではなく「線」や「面」で展開するということです。

明日から真似できる「ストーリーテリング」3つの手法

では、具体的にどのようなして受賞者のストーリーを抽出し、組織全体に波及させればよいのでしょうか。先進企業が実践している3つの手法を紹介します。

【手法1】スピーチの質を変える(インスピレーショナル・スピーチ)

表彰式での受賞者スピーチを、「ありがとうございます」だけの儀礼的なもので終わらせてはいけません。

株式会社日立製作所のグローバルアワードでは、受賞者による「インスピレーショナル・スピーチ」を導入しました。
ここでは単なる成果報告ではなく、活動の背景にある「苦労」や「想い」、そして「日立のアイデンティティをどう体現したか」という物語を語らせています。

非受賞者は、自分と同じような葛藤を抱えながら挑戦した同僚の姿に共感し、「自分も次はこうありたい」という強い動機づけを得ることができます。
これが、言葉による感情報酬の波及効果です。

【手法2】コンテンツの質を変える(ドキュメンタリー動画)

社内報に「〇〇さんが受賞しました」と写真付きで掲載するだけでは、多くの社員は読み流してしまいます。感情を動かすには、演出の力が必要です。

日清食品ホールディングス株式会社は、表彰式を社内会議の延長ではなく、ドキュメンタリータッチの「特別番組」として制作しました。
プロジェクトの裏側に密着し、高品質な映像コンテンツとして配信することで、社員を「読者」ではなく「視聴者」として惹きつけ、「面白そうだから見る」という入り口から、結果的に会社の目指すクリエイティブの基準(=経営メッセージ)を深く刷り込むことに成功しています。

【手法3】役割を与える(メンター制度への登用)

ナレッジシェアの最も直接的な方法は、受賞者を「先生」にしてしまうことです。

受賞者を社内講師やメンターとして公式に登用し、その知見を直接後進に伝える機会を設けます。
これは受賞者にとっては「名誉ある役割」というさらなる報酬となり、非受賞者にとっては「ロールモデルから直接学べる機会」となります。
受賞者を「一時のスター」で終わらせず、組織の能力底上げを担うリーダーとして位置づける、人材育成機能としての活用法です。

まとめ:表彰式は「ゴール」ではなく、ナレッジ共有の「スタート」である

社内表彰制度を「イベント」として見ていると、どうしても「当日の盛り上がり」や「サプライズ」にばかり目が行きがちです。
しかし、経営戦略としての表彰制度(アワード)において、式典はあくまで「ナレッジ共有のスタート地点」に過ぎません。

このように、表彰式以外の「日常」こそが、組織文化を醸成する主戦場です。

賞金という「消費される報酬」ではなく、ストーリーという「受け継がれる資産」を贈ること。それが、未来の受賞者を育て、企業の持続的な成長(サステナビリティ)を実現する投資となるのです。

リンクソシュールでは以下のようなセミナーを開催するとともに、個別での支援事例紹介も行っております。是非お気軽にご相談ください。

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